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『金閣寺』(きんかくじ)は、三島由紀夫の長編小説。三島の最も成功した代表作というだけでなく、近代日本文学を代表する傑作の一つと見なされ、海外でも評価が高い作品である〔奥野健男「『金閣寺』の狂気と成功」(『三島由紀夫伝説』)(新潮文庫、2000年)〕〔ドナルド・キーン『思い出の作家たち』(新潮社、2005年)〕。金閣寺の美に憑りつかれた学僧が、寺を放火するまでの経緯を一人称告白体の形で綴ってゆく物語。戦中戦後の時代を背景に、重度の吃音症の宿命、人生との間に立ちはだかる金閣の美への呪詛と執着のアンビバレントな心理や観念が、硬質で精緻な文体で綴られている。それまで三島に対し懐疑的否定的な評価をしていた旧文壇の主流派や左翼系の作家も高評価をし、名実ともに三島が日本文学の代表的作家の地位を築いた作品である〔。 1956年(昭和31年)、文芸雑誌『新潮』1月号から10月号に連載された。単行本は同年10月30日に新潮社より刊行され、15万部のベストセラーとなった〔佐藤秀明『日本の作家100人 三島由紀夫』(勉誠出版、2006年)〕〔これと同時に、豪華限定版200部も刊行された。〕。読売新聞アンケートで、昭和31年度ベストワンに選ばれ、第8回(1956年度)読売文学賞(小説部門)を受賞した〔山中剛史「才華繚乱の文学『金閣寺』の時代」(『別冊太陽 三島由紀夫』)(平凡社、2010年)〕〔松本徹『三島由紀夫を読み解く(NHKシリーズ NHKカルチャーラジオ・文学の世界)』(NHK出版、2010年)〕。文庫版は新潮文庫で刊行され、累計売上330万部を超えているロングセラー小説でもある〔『NHKニュースおはよう日本』(2011年2月5日放送)〕。翻訳版は1959年(昭和34年)のアイヴァン・モリス訳(英題:The Temple of the Golden Pavilion)をはじめ、世界各国で行われ、1964年度の第4回国際文学賞で第2位を受賞した〔『三島由紀夫事典』(勉誠出版、2000年)〕。 == 執筆背景・動機 == === 題材・モデル === 『金閣寺』の題材は、1950年(昭和25年)7月2日未明に実際に起きた「金閣寺放火事件」から取られたが、三島独自の人物造型、観念を加え構築し、文学作品として構成している。三島の没後30年の2000年(平成12年)に全公開された「『金閣寺』創作ノート」には、より詳細な構想の過程が見て取れる〔「『金閣寺』創作ノート」(『決定版 三島由紀夫全集第6巻・長編6』)(新潮社、2001年)〕〔『金閣寺』の直筆生原稿の一部の白黒コピーも、「三島由紀夫文学館」に展示されており、推敲や削除の苦心の跡が見える。三島の原稿はあまり直しがないという伝説があったが、実際には清書の前に細かな手入れや推敲が重ねられている。〕。 1955年(昭和30年)9月から、肉体改造(ボディビル)に乗り出した三島(当時30歳)は、「行為」の意味を模索し始め、その5年前に起った「金閣寺放火事件」の犯人・林養賢の犯罪行為(美に対する反感)を、「美への行為」と見なすことで、そこに三島自身の問題性、文学的モチーフを盛り込み、自らの人生の主題を賭ける新たな素材とした〔〔。また「創作ノート」には、〈林養賢は書かざる芸術家、犯罪の天才〉という記述も見られ、戦後社会の風潮に違和感を持っていた三島が、「犯罪の形で表れる若者のプロテスト」に親近感を抱いていたと佐藤秀明は解説している〔。 三島は同年11月に京都に赴いたが、金閣寺(鹿苑寺)の直接取材や面談は断られたため、同じ臨済宗異派の妙心寺に泊まり、若い修行僧の生活を調べた〔。金閣寺周辺取材について三島は、「それこそ舐めるやうにスケッチして歩いた」と語り〔三島由紀夫「室町の美学―金閣寺」(東京新聞夕刊 1965年2月20日号に掲載)〕、南禅寺、大谷大学、舞鶴近郊の成生岬、由良川河口も丹念に文章スケッチされ、五番町などは実際に遊郭の一軒に上がり、二階の部屋の内部の様子や、中庭に干された洗濯物までも詳細に記述されている〔〔。さらに、どうやって調査したのか、直接取材を断られたにもかかわらず、金閣寺内の間取りや畳数を記した室内図や作業場内部の図まで克明に描かれている〔〔。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「金閣寺 (小説)」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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